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「快適職場指針」に学ぶ重筋作業を伴う工場・物流センターにおける離職率改善のポイントとは?

少子高齢化の進行に伴い日本の労働力人口(15 歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は6,900万人前後で頭打ちとなる中、人手不足に悩む企業が増えてきています。
 
厚生労働省が公表した「令和3年雇用動向調査結果の概要」の産業別入職者・離職者状況によると、令和3年(2021年)における製造業の離職者数は78.61万人と入職者数66.48万人よりも大幅に超過しています。つまり、製造業では1年間で10万人以上の労働者が減少してしまったということになり、離職率の改善による労働力の確保は喫緊の課題と言えます。 

この記事では「快適職場指針」を紐解きながら、2023年における(特に重筋業務を伴うような)工場や物流センターの快適な職場のあり方を、最新事情を踏まえてご紹介していきます。


目次[非表示]

  1. 1.離職率改善
  2. 2.快適職場指針(事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針)とは
  3. 3.快適職場指針4つの視点
    1. 3.1.<作業環境の管理>
    2. 3.2.<作業方法の改善>
    3. 3.3.<労働者の心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備>
    4. 3.4.<その他の施設・設備の維持管理>
  4. 4.快適な職場環境づくりを進めるに当たって考慮すべき事項
    1. 4.1.継続的かつ計画的な取り組み
    2. 4.2.労働者の意見の反映
    3. 4.3.個人差への配慮
    4. 4.4.潤いへの配慮
  5. 5.2023年の「快適職場」において留意すべきこと
    1. 5.1.ダイバーシティ(多様性)への対応
      1. 5.1.1.<外国人>
      2. 5.1.2.<女性>
      3. 5.1.3.<高齢者>
      4. 5.1.4.<LGBT(性的マイノリティ)>
  6. 6.工場や物流センターにおける離職率改善の切り札「重筋作業」を軽減する設備投資
    1. 6.1.リフト&ドライブ
    2. 6.2.スライダーボード
    3. 6.3.アシスト台車
  7. 7.まとめ


離職率改善


従業員の高齢化や女性比率の向上などを背景に、特に重筋作業と呼ばれる重量物の運搬や上げ下ろしを伴う業務のある事業所では「業務がつらい」という理由で特に顕著です。
  
単に時給を上げるだけでは、雇い入れてもすぐ離職してしまうーーという悩みは、多くの企業に共通する悩みではないでしょうか。

離職率改善のための取組には、大きく分けて「賃上げ」と「職場環境改善」の2つのアプローチ方法がありますが、「職場環境改善」と言われても何から手を付ければ良いのか分からないという事業者も多いのではないでしょうか?
そんな事業者、特に工場や物流センターにおすすめなのが「快適職場指針」です。
 
「快適職場指針(事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針)」は平成4年(1992年)5月の労働安全衛生法改正を機に厚生労働大臣から公表された従業員が働きやすい快適な職場作りを行う際に留意するべきポイントをまとめたものです。
公開から30年以上経過していますが、2023年にも十分役立つ快適職場作りの原理原則がまとめられています。 

 


快適職場指針(事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針)とは



「快適職場指針(事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針)」は、平成4年(1992年)5月に労働安全衛生法が改正されて快適職場づくりが事業者の努力義務とされたのを機に、厚生労働大臣から公表された快適職場を作るために具体的にどう取り組めばよいかをまとめた指針です。

以前は「快適職場指針」に基づき事業者が自主的に作成した「快適職場推進計画」を労働局長が認定する「快適職場認定制度」があったものの平成22年度末に廃止されましたが、その内容は2023年にも役立つ示唆に富んだものといえます。 
 
「快適職場指針」が目指しているのは「仕事による疲労やストレスを感じることの少ない、働きやすい職場づくり」です。
 
職場は従業員が生活時間の約3分の1を過ごす従業員の“生活の場”です。
 
その“生活の場”が暑すぎたり、寒すぎたり、汚れていたり、不自然な姿勢等の身体に負担がかかる作業であったり、人間関係が良くない場合、従業員にとってそこは居心地の悪い、できれば逃れたい場所になってしまいます。また、生産性も低下してしまいます。
逆に職場が快適だと、従業員にとって居心地がよく、生産性も高い場所になるでしょう。
 
快適職場づくりに取り組むことで、離職率の改善・定着率の向上が期待でき、人手不足の解消や生産性の向上に繋がります。



快適職場指針4つの視点



快適職場指針では「作業環境の管理」、「作業方法の改善」、「労働者の心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備」、「その他の施設・設備の維持管理」の4つの視点から措置を講じることが望ましいとしています。
 
以下、順番に具体的にどのような取組が求められるのか確認していきましょう。


<作業環境の管理>


 ①空気環境・・・空気の汚れ、臭気、浮遊粉じん、タバコの煙
 
 ②温熱条件・・・温度、湿度、感覚温度、冷暖房条件(外気温との差、仕事にあった温度、室内の温度差、気流の状態)
 
 ③視環境・・・・明るさ、採光方法、照明方法、(直接照明、間接照明、全体照明、局所照明)、グレア、ちらつき、色彩
 
 ④音環境・・・・騒音レベルの高い音、音色の不快な音
 
 ⑤作業空間等・・部屋の広さ、動き回る空間(通路等)、レイアウト、整理・整頓


<作業方法の改善>


 ①不良姿勢作業・腰部、頚部に大きな負担がかかる等の不自然な姿勢
 
 ②重筋作業・・・荷物の持ち運び等をいつも行う作業等、相当の筋力を要する作業
 
 ③高温作業等・・高温・多湿や騒音等にさらされる作業
 
 ④緊張作業等・・高い緊張状態の持続が要求される作業や一定の姿勢の持続が求められる作業
 
 ⑤機械操作等・・操作がしにくい機械設備等の操作


<労働者の心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備>


 ①休憩室・・・・・・・・・・・リフレッシュルーム等の疲労やストレスを癒す施設
 
 ②シャワー室等の洗身施設・・・多量の発汗や身体の汚れを洗う施設
 
 ③相談室等・・・・・・・・・・疲労やストレスについて相談できる施設
 
 ④環境整備・・・・・・・・・・運動施設、緑地等


<その他の施設・設備の維持管理>


 ①洗面所・更衣室等・・・洗面所、更衣室等就業に際し必要となる設備
 
 ②食堂等・・・・・・・・食事をすることのできるスペース
 
 ③給湯設備・談話室等・・給湯設備や談話室等の確保



快適な職場環境づくりを進めるに当たって考慮すべき事項



快適職場指針では、以下の点に留意しながら快適な職場環境づくりを推進するよう提言しています。


継続的かつ計画的な取り組み


まずは快適職場推進担当者を選任するなど、体制整備を行うことが求められます。
また、快適職場づくりのための予算についても確保が必要です。
 
他にも快適な職場環境の形成を図るため、(特に工場等では)機械設備等の性能や機能の確保についてのマニュアルを整備することを推奨しています。
 
そして最も重要とされるのが「継続性」です。
企業の活動環境は日々刻々と変化するものですので、作業内容の変更、年齢構成の変化、技術の進展等に対応して定期的な見直しを実施して快適職場づくりの活動を継続することが重要とされています。


労働者の意見の反映


快適な職場づくりには、実際に職場で働く従業員の意見を真摯に取り入れることが重要です。
 
性急なトップダウンで取り組むのではなく、実際に職場で作業している従業員の意見を聞く場を設けることで、より効果的で優先度の高い取組を特定することができます。


個人差への配慮


不快に感じる温度や明るさ、音の大きさなどは、年齢や個人差があります。
 
感じ方には個人差があることを念頭に置いて、職場にとって最適なのは何かを考えていくことが重要です。


潤いへの配慮


「潤い」とは、辞書的な意味では「精神面でゆとりがみられること」を指します。
 
職場にもこの「潤い」を持たせ、従業員がリラックスさせることへの配慮が求められると快適職場指針でも言及されています。
 
職場は企業活動の場であると同時に従業員が日々の約3分の1を過ごす“生活の場”でもあることを念頭に、快適な職場とは何かを事業所ごとに考えていく必要があります。



2023年の「快適職場」において留意すべきこと



「快適職場指針」が公表された平成4年(1992年)と現在(2023年)では社会経済の環境は大きく異なります。
 
この章では2023年における快適職場で留意するべきポイントをあらためてまとめました。


ダイバーシティ(多様性)への対応


2023年の工場や物流センターでは、多様な属性、多様なバックボーンを持つ人々がともに働くようになっています。
当然、属性やバックボーンが異なれば快適/不快と感じる基準も変わります。
 
以下のような対応が求められていると言えます。


<外国人>



厚生労働省が2023年1月に公表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)によると、令和4年(2022年)10月末時点で日本国内には約182万人もの外国人労働者が働いていており、その26.6%が製造業で働いています。
 
出身国もベトナムや中国だけでなく、フィリピンやネパールなど様々であり、それぞれ国民性や信仰する宗教も異なります。快適/不快の基準も日本人と異なる場合も多いため、丁寧な対応が求められます。


<女性>



厚生労働省が公表している「令和4年版厚生労働白書」によると、令和3年(2021年)における女性の雇用者数は2,739万人となり、雇用者総数に占める女性の割合は45.5%まで高まっています。
 
特に物流センターは女性の比率が高い職場と言われており、重要な労働力となっています。若年男性の労働者人口が減少する中で、重筋作業に従事する女性従業員も増えています。
 
かつて労働者のほぼ全員が男性だったような古い工場や物流センターの中には、男女別のトイレが無い職場も多いようですが、そのような職場では男女別トイレの設置などは優先度の高い取組事項と言えます。
 
また子育て世代の離職率改善へ向けた取組として、従業員が利用できる保育所の設置も効果的な取組と言えます。複数の事業所が協力して保育所を準備するといった取組だけでなく、就業時間中は提携保育所に子どもを預けられるようにするなど様々なアプローチが考えられます。


<高齢者>



厚生労働省が公開した令和2年版高齢社会白書(全体版)によると、労働力人口のうち65~69歳の者は438万人、70歳以上の者は469万人であり、労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は13.2%と上昇し続けています。
高齢者は女性と並び重要な労働力の供給源と位置付けられており、その活用と離職率の改善は人手不足解消にとって重要です。
 
工場や物流センターではこれまで体力の落ちた高齢者には任せられないとされてきた不良姿勢作業や重筋作業などについても、業務フローの見直しや設備投資によって従事できるようにする工夫が各所で進んでいます。


<LGBT(性的マイノリティ)>



「LGBT」とは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)の頭文字を取った性的マイノリティの人々を指す総称です。
 
2023年の日本において、職場でLGBT当事者が自身の性自認についてカミングアウトをするハードルはまだまだ高いと言われていますが、日本のLGBT比率は3~10%とも言われており、人手不足の中でLGBTを理由にした離職者を出してしまうことは事業にとってリスクとなります。
 
その場合は、LGBT当事者と周囲の従業員にとって快適なトイレや更衣室の扱いはどのようなものか検討していく必要が出てきます。


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工場や物流センターにおける離職率改善の切り札「重筋作業」を軽減する設備投資


株式会社ジャロックには、これまで「快適職場指針」を参照しながら見てきた快適な職場作りの中でも離職率改善の決め手となりうる「重筋作業」を軽減するようなソリューションがあります。


リフト&ドライブ


「リフト&ドライブ」はスウェーデンのモジュラー式システムの電動式軽量リフターです。
 
力持ちの男性が複数名で行うような作業(重筋作業)を、女性や高齢者が1名で行えるようになるソリューションです。
 
「リフト&ドライブ」の特徴は多種多様なアタッチメントツールを選択できる点です。
アタッチメントツールの組み合わせにより、あらゆる形状の重量物(箱/ロール/袋など)を、水平搬送したり回転させたり持ち上げたりすることができます。


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スライダーボード


「スライダーボード」は重量物の水平搬送に特化した特殊な樹脂板です。
 
段ボールなどの重量物をスライダーボードの上を“滑らせる”ことで、持ち上げて運搬するよりも遥かにラクに荷物移動ができるようになるソリューションです。
 
スライダーボードの特徴は、導入コストの安さと商品バリエーションの多さです。
トラックなどの荷台上で滑らせたい場合は「ボードタイプ」、重量物を載せたパレットを運びたい場合は「レールタイプ」「船底タイプ」など、運びたい荷物に運びたい荷物に対応した様々なタイプやサイズが用意されていますので、幅広いニーズに対応できます。


≫ スライダーボード 詳細情報はこちら




アシスト台車


「アシスト台車」は電動自転車等にも使われている国産アシストユニットを搭載した特殊台車です。
 
女性や高齢者でも100kgを超えるような重量物を載せてラクラク運搬することができるようになるソリューションです。
 
アシストユニットのみの販売もしているため、現在使っている現在使用している台車やオリジナルのカスタム台車に電動アシスト機能を付加することも可能です。


≫ アシスト台車 詳細情報はこちら




上でご紹介した株式会社ジャロックの3つのソリューションについてまとめたカタログを無料で公開していますので、より詳細な内容を知りたい方はぜひダウンロードしてみてください。



まとめ



快適職場指針を手がかりに工場や物流センターの離職率を改善する取組についてご紹介してきました。
できるものから着手してみてはいかがでしょうか?
その際に重要なのは「当事者である従業員の意見を取り入れて優先順位を決めること」です。
 
特に重筋作業を伴う事業所でも女性や高齢者が働くようになっており、重筋業務のように負荷の高い作業を女性や高齢者でも安全かつ快適にこなせるようにすることは離職率改善の強力な切り札となるでしょう。

ジャロックでは重筋作業以外にも工場や物流センターの快適な職場づくりに貢献できるソリューションを多数ご用意しています。
 
例えば温熱条件の快適化に大きく貢献できる「リボリューションファン(HVLSファン)などです。
 
快適な職場づくりに課題をお持ちの担当者様は、ぜひ一度ジャロックまでお問い合わせください。



問い合わせリンクhttps://www.jaroc.com/contact    


電話番号    :0120-70-3810(受付:平日 9時〜18時)



 



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